後天的な要因が細胞の遺伝情報に影響を与える
化学物質の影響
子供と親はよく似ています。骨格や髪の毛の質までも似るほどです。これは親が持つ遺伝情報が子供に引き継がれるからです。この遺伝情報は、簡単には変化しません。しかし、いくつかの条件下では、遺伝情報が変化させられてしまいます。
その条件の1つに、化学薬品があります。アメリカとベトナムが戦争した時に、アメリカ軍は「枯れ葉剤」を使用した話は有名です。その結果、ベトちゃん・ドクちゃんのような、奇形をもった子供が多く産まれました。その影響は現在も続いています。
日本でも高度成長時に、多くの化学物質を使用しました。その化学物質を適正に処理せずに、河川や空気中に放出した結果、水俣病やイタイイタイ病が発症しました。このように、化学物質は細胞の遺伝子を狂わせてしまうとても怖い物質です。
その他には、界面活性剤や防腐剤、または食品添加物などを長期的に摂取した場合、細胞の遺伝子に変化が生じるといわれています。
偏った「しつけ」が遺伝以外の病気の発症原因になる
親が離婚し再婚した場合は、家族構成が変わります。このとき、後妻さんが子供に対して暴力をふるったり、愛情を注がなかったりした場合、その子供は、ストレスによる病気が発生します。
他にも、大学教授や弁護士の子供が、親からの執拗な教育指導に耐えきれずに精神的に不安定になり、うつ病を発生することもあります。それとは逆に、幼少期は放任主義のしつけをしてきた親が、急に管理主義のしつけに変化させた場合にも、精神的な疾患がでる場合があります。
また、毎日の食事でも、遺伝子以外の病気が発生します。例えば、親がまともな食事を作らず、ジャンクフードばかりを食べている子供は、遺伝ではない若年性の糖尿病になったりします。
このように、親の偏った考えにより、遺伝情報ではない病気が発生する場合があります。
母体と病気の関係
病気の原因は遺伝以外に何があるのでしょうか? 1つは、妊娠中の母親の精神状態や栄養状態があります。つまり、妊娠中に極度のストレスや栄養不良に陥った場合には、遺伝以外の病気になる可能性が高くなります。
実際に、戦争の紛争地域で生活している妊婦は流産や早産、または死産の確率が高くなります。また未熟児で生まれてくる確率も高まります。
さらに、アフリカなどの食料難の場所に生まれてきた場合、母乳がでなかったり、母乳の栄養素が不足していたりして栄養失調に陥り病気になります。
このように、妊娠から出産、そして出産後の母乳のことなど母親と病気の関係は深いものがあります。
父親の遺伝子が変化する
上記したように、乳幼児の病気は母親の責任論が先行してきました。しかし、一つの実験結果から、父親にも遺伝以外の病気の発症原因があることが分かってきました。
その研究は、2013年にアメリカの研究チームが雑誌「ネイチャー」で発表しました。これを、まとめてみます。
この研究によると、「父親が何度も恐怖に遭遇すると、その記憶は精子を介して子孫に伝えられる」という内容です。
研究は、マウスを使い下記のような手順で行われました。
@オスのマウスの足に電流を流す装置をつける
A「桜の花」の匂いをかがせその直後に、マウスの足に電流をながす。その実験を繰り返す
Bオスのマウスにとって、桜の花の匂いが「恐怖の合図」になり、花の匂いを嗅いだマウスは震えだす
Cそのマウスを「つがい」にし、交尾させ子供を作らせる
D生まれてきた、子供のマウスにさまざまな「かおり」を嗅がせる
そうすると、父親が恐怖心をもった「桜の花」の匂いを嗅いだときだけ、子供のマウスが震え、強く怯えるしぐさを見せたそうです。
遺伝情報は精子内に組み込まれており、外からの影響には大きく左右されないと今までは考えられてきました。しかし、今回の実験では以下のようなことが分かってきました。
@個体(この実験ではオスのマウス)の経験が遺伝子の情報に組み込まれる
Aその組み込まれた新たな遺伝情報が後の世代に引き継がれる
この実験にはその後の続きがあり、最初の実験に使ったマウスの「孫」にあたるマウスにまで同じような反応がでたと発表しています。
驚くことに「子供」や「孫」にまで、変化した遺伝情報が伝わったことになります。実験に使った三世代のマウスの精子から取ったDNAを調べると、下記のようなことが分かってきました。
@匂いにかかわる遺伝子のなかで、とくに嗅覚(しゅうかく)を制御する遺伝子に変化が起こっていた
A脳の嗅覚神経細胞が大きく発達していた
このような変化がみられたそうです。Aの嗅覚神経細胞が発達した理由は、怖い匂いを「いち早く、感じとれる」ように発達したのではないかといわれています。
後天的な要因も病気の原因になる
我々の遺伝情報は、細胞のDNAに組みこまれています。そのおかげで、外的な要因では容易に変化をしないとされてきました。したがって、病気になる原因は、最初から組み込まれた遺伝情報の影響が大きいと考えられてきました。
しかし、今回のマウスの実験から、極度のストレスを経験すると、後天的な要因が遺伝子を変化させるということが分かってきました。マウスと人では、構造的にも違うところが多いですが、私は多くの患者さんを診てきた経験から、この記事を読んだ際に「人にも同じようなことが起こっている」と感じました。
病気になる一つの大きな要因は「遺伝」によるところがあります。しかし、遺伝だけではなく、ストレスなどによって細胞が傷つくことで、遺伝情報が適切に伝わらなくなります。そのことが原因で、遺伝以外の病気になる可能性もあることを認識してください。
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