副腎と脳の関係を理解する
副腎を知る
副腎は哺乳類などに存在する器官であり多くのホルモンを分泌する内分泌器官です。
ここでは副腎が体のどの部分に位置し、どのような働きをしているかを説明していきます。
副腎は左右に二つあり、大きさは、縦幅:2.5センチ、横幅:3.5〜5センチであり、厚さは約0.6センチ、重さは約3.5〜5グラムになります。男性の副腎は女性の副腎に比べて、若干大きくて重いです。
二つの副腎はどちらも左右の腎臓の上に帽子をかぶったように隣接して位置しています。肋骨の位置で説明しますと一番下の肋骨(12番目)の裏側に位置しており、副腎を傷つけないように肋骨によって外部からの衝撃から守られています。
また左右の副腎は3つの大きな動脈と大静脈のごく近くに配置されています。その位置にあるおかげで脳からの命令を受けた副腎は数秒以内に「各種ホルモンを必要な臓器に送ることが出来る」といわれています。
それぞれの副腎は2層構造をしており外部の副腎皮質と内部の副腎髄質から構成されています。この「髄質」と「皮質」がどのような働きをしているのか簡単に説明します。
火事場の馬鹿力と副腎髄質
人間はストレスと戦っていますが、このストレスはどこで感じるのでしょうか? それは脳です。脳がストレスを感じると、このストレスに負けないように副腎にホルモンを要求します。
脳からのホルモンの要求に副腎は真摯(しんし)に答え、ホルモンを生産します。例えば、我々が危機(事故、手術など)に陥ったときにそれを乗り切ろうとする際、とんでもない力がでたり日常ではできない動きがでたりします。これが俗に言う火事場の馬鹿力です。
この火事場の馬鹿力が出せるのは副腎が出すホルモンのおかげです。この危機的な状況を乗り切るためのホルモンは副腎の「髄質」で作られています。
副腎の内部の「髄質」で作られるホルモンは2種類あります。1つはアドレナリン(エピネフリン)もう1つはノルアドレナリン(ノルエピネフリン)です。
強いストレスを感じた時に「髄質」で作られる2種類のホルモンの働きを説明します。
@アドレナリン(エピネフリン):心臓に働きかけ心拍数をあげたり血管や気管支を拡張させます
Aノルアドレナリン(ノルエピネフリン):主に血管に働きかけて血管を収縮せます。
これら二つのホルモンの作用により、我々は危機的な状況を乗り切ることができます。
生きていくために絶対必要なホルモンを作る副腎皮質
先ほど副腎の髄質について説明しました。脳がストレスを感じた際には、副腎の外部の「皮質」もホルモンを生産します。
「皮質」では合計約50以上のホルモンの「元」になる材料を作ります。その材料を利用して最後に約12種類のホルモンを作成し、血液を介してホルモンを必要な場所まで送り届けることにより、脳や体が正常に働きます。
次に「皮質」が作るホルモンとその働きを簡単に説明します。
「皮質」は外、中、内と三層に分かれています。外の球状帯(きゅうじょうたい)、中の束状帯(そくじょうたい)、内の網状帯(もうじょうたい)から構成されています。この各々の「帯」から人が生きていくために必要な多種のホルモンを生産します。
では球状帯、束状帯、網状帯で作られるホルモンはどのようなものなのでしょうか。具体的には、
球状帯:アルデステロンの分泌
束状帯:コルチゾールの分泌
網状帯:プロゲステロン、DHEA、エストロゲン、テストステロンなどの分泌
をします。
次に球状帯、束状帯、網状帯で作られる各種ホルモンの働きを説明します。
アルデステロン
このホルモンは血液や細胞、また細胞間質のミネラルバランスを正常に保つために働きます。特にナトリウム濃度とカリウム濃度のバランスを維持します。副腎が疲労するとこのバランスがくずれ、ナトリウムが体外に流出してしまいます。
コルチゾール
このホルモンが最も重要なホルモンです。このホルモンは脳の中枢神経を刺激し、ストレスに対応します。また抗炎症作用や免疫のバランスを維持します。
他にはたんぱく質、脂質、炭水化物の代謝を調整し、ストレス下でも血糖値のコントロールなどをすることで正常に保つ働きがあります。コルチゾールは生命維持機能の根幹をなすホルモンといえます。
プロゲステロン、DHEAなど
これらのホルモンは男女の性ホルモンの補助的な働きをします。このホルモンの作用で良質な性ホルモンのバランスを維持します。他には生命維持に重要なコルチゾールを調整したり抗酸化作用を強めたりします。壊れた組織の修復を促進する作用も知られています。。
以上が副腎皮質によって生産されるホルモンとその働きです。
このように脳がストレスを受けた際に即時に働く「内分泌器官」が副腎です。副腎ホルモンの作用で我々の脳や体は絶妙なバランスを保つことが出来ます。
例えば副腎を摘出したラットを強いストレス状態にさらすと長くは生きれません。このことから解るように「脳と副腎」は切っても切れない関係にあります。
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