痩せてる人が太れない理由:甲状腺ホルモンの関係
痩せ過ぎは病気である
2015年の厚労省の発表によると8人に1人が痩せ過ぎであると報じられています。
痩せ過ぎの人は、太ることができないばかりではなく、慢性疲労症候群になりやすかったりホルモンに異常がでたりと多くの症状を抱えて生活しています。
しかし、世間一般では痩せ過ぎの人は病気と捉えてもらえません。したがって、痩せ過ぎを太らせる情報や、元気にするための情報はほとんどありません。
私の治療所ではコンセプトの一つに、「痩せ型の方を元気に!」というものがあります。なぜそのようなことに取り組んでいるのかというと、痩せ過ぎは病気であると私は思っているからです。
痩せ過ぎ、太り過ぎの原因にホルモンが関与する
一般的には食事量が多いと太り、少ないと痩せると思われがちです。
しかし実際は、痩せ過ぎの人は「痩せの大食い」であったり、太り過ぎの人が「見た目より少食」であったりします。
このように食事量だけで体重の増減が左右されているのではなく、体内でおこなわれている複雑かつ精妙な働きが関係します。その働きの1つに甲状腺ホルモンの作用があります。
痩せ過ぎはホルモンを多く使う
痩せ過ぎの人の性格は、自分に厳しく他人にも厳しいことがあります。そのことで常にストレスを感じて生活しています。ストレスに対応するには副腎が造るホルモンが必要です。その副腎ホルモンの材料は肝臓が合成するコレステロールです。
コレステロールは肝臓で約70%が合成されます。また、残り30%は食材に含まれるコレステロールを利用し、肝臓で合成されます。
痩せ過ぎの人は、肝臓が造るコレステロールの合成能力がが弱い傾向にあります。さらに、痩せ過ぎの人は胃や膵臓、または胆のうの働きが弱いため、タンパク質や油物の消化が苦手なためにそれらの食材を敬遠します。
そのことで、コレステロールを食事から摂取できないために、副腎ホルモンの材料が不足します。
上述したように性格上、多くのホルモンを必要とするのが痩せ型タイプですが、それに反し体内でホルモンを造る能力は低い傾向にあります。
痩せ過ぎは甲状腺に負担がかかる
ストレスに対応するために副腎ホルモンが必要です。そのホルモンを要求してくるのは脳です。
脳からの命令で副腎は多種のホルモンを合成します。しかし度重なる脳からの命令で、副腎の合成するホルモンの質・量が低下してきます。
そうなると脳は、今度は甲状腺に対してホルモンを造るように命令をだします。ようするに、副腎の機能が低下したことで、ホルモン合成の矛先を甲状腺に変えて体内のホルモン量を確保しようとします。
しかし元来、痩せ型タイプは甲状腺でのホルモン合成能力が弱い傾向にあるために、脳が要求する質・量に富んだホルモンを合成できません。
甲状腺刺激ホルモンの量は増える
脳内にある下垂体前葉から、甲状腺に向けて甲状腺刺激ホルモン(TSH)が分泌されます。
甲状腺は、この刺激ホルモン(TSH)の命令を受けて甲状腺ホルモンを合成します。
痩せ型タイプは遺伝的な要素も含め、甲状腺でのホルモン合成能力は弱い傾向にあります。したがって、脳が要求してくるホルモンの質・量を賄うことができません。
そうなると脳は、さらに「甲状腺ホルモンを造りなさい」と甲状腺に対して命令します。ようするに、脳下垂体前葉から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌量が増えます。
そのことは血液検査でチェックできます。
痩せ型タイプは、甲状腺に存在する受容体の感受性が鈍い
脳から甲状腺刺激ホルモン(TSH)が放出され、甲状腺に到達します。このホルモンを感知する受容体が甲状腺の上皮細胞にあります。
この受容体はタンパク質からできており、その働きは遺伝子による影響が強いと考えられます。
したがって、遺伝的にこの受容体の感受性が鈍いことで、ホルモンの合成能力は低下する傾向にあります。
また、執拗な脳からの命令を中長期的に受けてきた受容体は、「自ら甲状腺刺激ホルモン(TSH)に対し反応を鈍らせているのではないか」、と私は推測しています。
痩せ型タイプは、葉酸の代謝能力が弱い
痩せ型タイプは、性格面や遺伝的な要素の影響で甲状腺においてホルモン合成能力が低下傾向であることはお伝えしました。
それに加え痩せ型タイプは、体内にある栄養素から甲状腺ホルモンを合成する能力も低い傾向にあります。
甲状腺を正常化させる栄養素の一つに葉酸があります。
一般的な日本の食生活では、葉酸が不足することはまずありません。また近年、日本人の炭水化物過多の食生活の影響で腸内のバクテリアが異常繁殖しています。そのバクテリアは葉酸を生産します。そのことからみても葉酸が不足することは考えにくいです。
しかし痩せ型タイプは、食品に含まれる葉酸やバクテリアが合成した葉酸、またはサプリメントで摂取した葉酸をそのままでは代謝(使用)できない傾向にあります。
なぜなら痩せ型タイプは、肝臓で合成される転換酵素が弱いからです。
摂取した葉酸を体が使える葉酸(メチル葉酸)に変換させるためには、肝臓で合成される転換酵素が必要です。この転換酵素の生産能力は、遺伝的要素と度重なる甲状腺ホルモンの合成により低下します。
甲状腺ホルモンの合成能力が弱いことでさらに葉酸摂取量を増やしてしまう
食品や体内で合成された葉酸をそのままでは代謝(使用)できない痩せ型タイプは、血液検査で甲状腺ホルモンの低下を指摘されます。
そのことで痩せ型タイプは、さらに甲状腺ホルモンの材料の一つである葉酸をサプリメントなどで補充します。
しかし、葉酸の摂取量が多くなることでそれを転換する酵素の能力は低下します。そのことで代謝できる葉酸はさらに不足することになり、「実質的葉酸不足」になります。
また、ここ5年ほどの研究による世界的な傾向として、葉酸を「体内で利用できる葉酸」に転換する酵素を作る能力が痩せ型タイプでは低下していることが分かってきています。
そのようになる原因は遺伝的な要因だけではなく、現代人はストレスに対応するために多種のホルモンを必要とします。そのことで、ホルモンを合成する器官やそれ働きに関連する機能が徐々に疲弊していることが推測されます。
甲状腺刺激ホルモン(TSH)の値が上昇する理由
脳から甲状腺に対し甲状腺刺激ホルモン(TSH)が分泌されることで、甲状腺ホルモンが合成されることはお伝えしました。また、痩せ型タイプは甲状腺ホルモンの合成能力が低いこともお伝えしました。
ここで、なぜ痩せ型タイプは甲状腺刺激ホルモン(TSH)がの値が上昇するのかをまとめてみます。
@痩せ型タイプは、遺伝的要素を含め甲状腺ホルモンの質・量の合成能力が低い傾向にある
A痩せ型タイプが造る甲状腺ホルモンは質・量とも不足傾向にあるために脳は満足しない
B「A」の理由で脳はさらに、甲状腺に対しホルモンを造るように下垂体に命令を出す
C脳の指令を受け、下垂体からは甲状腺刺激ホルモン(TSH)が増える
上記したことで甲状腺刺激ホルモン(TSH)の量が増え、血液検査で確認されます。
しかし痩せ型タイプが、脳から甲状腺ホルモンを合成するように命令されても、元来その作用が弱いために質・量に富んだホルモンが合成できません。
そのことで、さらに脳は甲状腺ホルモンの合成を促すために甲状腺刺激ホルモン(TSH)を分泌します。
痩せ過ぎを元気にするのは大変である
痩せ型タイプの特徴に甲状腺ホルモンの合成能力が弱いことはお伝えしました。それらの働きを高めるのは容易ではありません。
何故なら、遺伝的な要素や性格上の問題などが複雑に絡み合っているからです。
特に痩せ型タイプは、体内酵素が弱い傾向にあります。そこで弱い酵素の働きをを活性させるためにビタミン・ミネラルの摂取は必要です。例えば発酵食品は有能なビタミン・ミネラルが多く含まれているので積極的に食べることをお勧めします。
また症状によっては、サプリメントの服用を必要とする場合もあります。しかし、多くのサプリメントから「自分に必要なサプリメント」を選ぶのは難しいので良い指導者が必要になります。
痩せ過ぎの人はより良い食品を摂っても体調が不良の方が多くいます。その背景には、摂取した食品を体内で利用する能力が低い理由があることをご理解下さい。
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