腸内細菌のバランスが崩れる本当の理由
腸内には免疫を担うリンパ球の70%が存在している
生まれたばかりの赤ちゃんの大腸は無菌状態です。ただ、母乳を飲みだすと腸内ではビフィズス菌が自然発生します。その後、離乳食や普通食になっていく過程で多くの雑菌が増え、成人の大腸には100兆個もの細菌が棲息するよになります。
この腸内に棲息している細菌群の働きの1つに、腸管免疫を正常化させることがあります。「腸は大切である」といわれている理由は、体内にある免疫を担うシステムの70%が腸管に存在しているからです。
多くの物質や異物が腸から吸収されます。その際に、腸壁では送られてくる物質が「体にとって必要」か、または「敵はいないか」などを識別しています。そして、細菌・ウイルスなどを見つけた際は、リンパ球などが即座に攻撃します。
このことから考えると腸管の働きは、空港の税関と同じ役目をしているように思えます。
腸内細菌のバランスが崩れる理由
私の治療所に多くの患者さんが来られますが、最近、特に多い症状に慢性の軟便があります。油物や焼き肉、またはお酒を飲み過ぎたりした場合には決まって軟便になるのが特徴です。
この軟便の原因の1つに、胆汁の質の低下が挙げられます。胆汁は、肝臓で造られるコレステロールを材料に合成されます。
胆汁は胆のうに溜められていて、脂質の消化の際に十二指腸に流れ込みます。胆汁の作用で消化された脂質は小腸壁から吸収されます。
しかし、現代人は、唐揚げや豚カツ、またはドーナツなどの油を使った食品を多く食べます。したがって、それらを分解する胆汁が多く必要になってきます。そのような食事を長年続けていると、胆汁の材料であるコレステロールを造る肝臓が疲弊してきます。
疲弊した肝臓が造るコレステロールの質は低下し、質の低下したコレステロールから造られた胆汁の質も低下してきます。
上質の胆汁は小腸で90%が再吸収される
体にとって「脂質」は必須です。胆汁は、脂質を分解・結合し小腸壁から吸収され、体の必要な場所に運ばれます。その吸収率は90%であり、胆汁が大腸に流れ込む量はとても少ないです。
しかし、それはあくまで「上質な胆汁」の話です。質の低下した胆汁が、脂質を分解・結合し小腸壁に達した際に、小腸壁にあるセンサーはそれらを不必要物と判断し受け入れを拒否します。
そうなると、胆汁と脂質は大腸に流れ込みます。本来、胆汁は大腸には流れこまないので、大腸からすれば「招かざる客が来たと」判断し、それらを速く体外に捨てようと「軟便」になります
このメカニズムが原因で、現代人の多くが軟便傾向にあります。
大腸に流れ込んだ胆汁は、腸内細菌のバランスを崩す
大腸には1000兆ともいわれている細菌が棲息しています。それらは、絶妙なバランスを保っています。その腸内細菌のバランスを崩す原因の1つが、質の悪い胆汁です。
上述したように軟便になると、腸内の不必要な物質と一緒に有能な腸内細菌類も体外にでてしまいます。そうなると、体内では一から腸内細菌を増やす作業が必要になります。
しかし、再度、軟便になると苦労して増やした有能な腸内細菌がまたも排出されてしまいます。
このように、慢性の軟便が腸内細菌のバランスを崩す、「真の犯人」なのです。
腸内細菌ビジネスが横行しています
世間では、腸内細菌を増やす可能性があるサプリメントが多く販売されています。「腸まで届くビフィズス菌」などのキャッチフレーズで、如何にも服用した物質が腸内で増えるように謳っています。
それらを販売する業者は、現代人の食事の影響で腸内細菌が減少していると訴えかけます。そのことを聞かされると、「足らなくなった腸内細菌は補っておいた方が良いのでは」という考えになります。
しかし、本来はなぜ、腸内細菌が不足傾向にあるのかを考えた方が得策です。
上質のコレステロールが上質な胆汁を造る。このことが大切です。尚、このことは「ホルモンの材料は何か」に詳しく述べているので参考にして下さい。
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