「高コレステロールになる食べ物」の神話
食べ物でコレステロール数値は上がらない
食べた物によってコレステロール値が上がるという学説は、1913年にロシアの医学者であるアニスコフが「ウサギ」を使っておこなった実験から生まれました。この実験とは、ウサギにコレステロールを多く含むエサを食べさせ、血管がどういう変化をするのかを調べたものです。
実験の結果、ウサギの大動脈にコレステロールが沈着していました。そのことからコレステロール値の高い食べ物をたべるとコレステロール値が上昇し、血管の内部にコレステロールが沈着する動脈硬化の状態になるという結論がでました。
ただ、その後の研究で、多くの異論がでてきました。他の研究者たちが同じ実験を「犬」や「猫」に実施しました。が、ウサギのような血中コレステロールの上昇は起らなかったのです。このような結果がでた理由は、ウサギが草食動物であり、犬や猫は肉食動物であることの違いからということがわかりました。
草食動物と肉食動物の違いは小腸にあります。その違いには、
草食動物の小腸:コレステロールを多く含んだエサを与えると小腸の粘膜からほぼ100%吸収される
肉食動物の小腸:コレステロールを多く含んだエサを与えても小腸で吸収できる量は決まっている
ということが知られています。
つまり、草食動物はコレステロールが100%吸収されて血液中に入っていき、急激に血中コレステロール値が高くなります。その結果、動脈硬化が起こります。
これに対し、肉食動物は、体に必要なコレステロール量だけを吸収するというシステムがあります。不必要なコレステロールは便から体外に排出されるので、血中コレステロールの値は高くなりません。
上記のような実験から、、コレステロール多く含む食事を食べても、肉食動物は血中のコレステロール値は上昇しないということがわかってきました。
しかし不思議なことに、いまだに1913年におこなわれた「ウサギ」の実験結果が伝わっています。これは、科学などの実験は「一番最初に行った実験で実証された結果が、後世にまで伝えられる」ことが多いからです。
では、人がコレステロールを多く含む食事をした場合はどのような結果になるのでしょうか? 人が食べた物を消化・吸収する仕組みは、肉食動物に近い構造になっています。そのため、食事によって血中のコレステロールの値は高くなりません。
上記のことから考えますと、人の場合はコレステロール値が高い理由は、食べ物が直接関係していないということを理解して頂けたと思います。
しかし、前述の通り、この「ウサギの実験」の言い伝えは根深く浸透しています。特に日本の医療はコレステロールを悪者にします。日本では、卵は一日に1個まで、エビやタコまたは肉などはコレステロール値が高くなるから食べないようにという話をよく耳にします。
憶えておいてほしいのは、コレステロールは肝臓で造られるということです。コレステロールを含む食事から作られるコレステロールは25%で、残りの75%は食事には関係なく肝臓で合成されます。
したがって、コレステロールを含む食品を減らすと、食品由来の25%分のコレステロールを補充できなくなります。その不足した25%分の穴埋めを肝臓自身が頑張って合成しなければならないので、肝臓に負担がかかります。
肝臓が造るコレステロールは、脳の栄養やホルモンの材料になる重要なものです。コレステロールの摂取を控えている方は一度お考えください。
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