「摩る(さする)」ことは驚くべき効果がある @
超過敏体質の人は想像以上に多い
私の治療所には、病院では原因が判明しない慢性疾患の患者さんが多く来院されます。慢性=長期間、体調不良が続くと自分を守ろうとする機能が過敏になります。
特に顕著(けんちょ)に表れるのが皮膚感覚です。その理由は、自分を守ろうとする際に外部からの異物の侵入を防ごうとするからです。
その証拠に、慢性疾患を患っている人は、痛がり過ぎたりこそばがり過ぎたりします。つまり、皮膚感覚が過敏なことで、人の温かみのある手の治療でさえ「敵がきた」と過剰反応してしまうのです。
手で神経指圧していく療法が川本療法なのですが、慢性疾患の患者さんへはその技術が通用しないことがあります。
しかし、私の考えの根底に、皮膚刺激をしないで病気を治すことは不可能であるというものがあります。そこで超過敏な体質の方への皮膚へのアプローチ法の1つに「摩る」療法を用います。
「摩る」療法は、痛がりやこそばがりの人であっても、受け入れてくれる療法です。理由は明快です。痛すぎず気持ちいいからです。
「摩る」療法は、脳が安心する
超過敏体質の患者さんへアプローチする方法は限られています。その1つに「摩る」療法があります。
「摩る」療法を施すと、大多数の人が「気持ちいい」「体が温かくなってきた」といってくれます。そして、必ず「なんだか、安心する」という言葉がでてきます。
この「なんだか、安心する」は、とても大切なワードなんです。なぜなら、皮膚を「摩る」ことで「なんだか気持ちいい」と感じることは、皮膚が感じた情報が脳に伝わり、その結論、発せられたワードだからです。
つまり、「摩る」ことで脳が安心するということです。
「痛いの痛いの飛んでイケー」の真実
家具などの角に、腕をぶつけ「痛ーい」という経験があると思います。その時に、無意識に患部を摩っていませんか?
また、痛がっている子供に対して、「痛いの痛いの飛んでイケー」と患部の周りを摩ってあげた経験はありませんか?
無意識にしている「摩る」ことに実は「知られざる理由」があるのです。その理由は鎮痛のメカニズムで「ゲートコントロール理論」を知ることで解明できます。
「ゲートコントロール理論」1965年に生理学者パトリック・ウォール氏と心理学者ロナルド・メルザック氏によって提唱された「疼痛が抑制される理論」です。
ゲートコントロール理論では「痛い患部の周囲を摩ると痛みが和らぐ」メカニズムがどのようにして起こるのかを説明しています。
「痛い」って、何がどうなって感じるのか
ゲートコントロール理論は難しいのでここでは簡単に説明しますが、本質とは少しズレが生じると思いますがお許しください。
痛み=危険といえます。その情報をいち早く脳に伝えるのは生命維持のためです。その痛み情報を感じとるのが「T細胞」です。
痛いと伝える神経は細く伝達速度は速いです。その働きはC線維やAδ線維が担っています。痛み情報が早くT細胞に届くことはいいことですが、痛い情報が早く伝わることで生体はパニックになることがあります。
一方、過剰なスピードで「痛い情報」がT細胞に伝わらないように、痛みを抑制する神経が存在します。その働きは太い神経のAβ線維がになっています。
このAβ線維が存在するおかげで痛みのバランスが取れているのです。
何かにぶつかって「痛い」と感じた情報は、細い神経(C線維やAδ線維)に伝わり、いち早くT細胞に伝わります。
その際、細い神経(C線維やAδ線維)の働きが優位であり、痛みを抑制する太い神経(Aβ線維)の働きは抑制されています。
痛みのメカニズムは上記しました、そのことから、痛みメカニズムの逆を働きを活性させれば痛みを軽減できるといえます。
そのためには、痛みを抑制するには太い神経のAβ線維を「摩る・撫でる」の刺激が有効です。
なぜなら、Aβ線維は触覚を感じる神経であるため、「摩る・撫でる」がAβ線維を活発に働かせる刺激だからです。
つまり、「摩る・撫でる」でAβ線維の働きを優位にし、C線維やAδ線維の働きを抑制させることで痛みが軽減するというものです。
摩ると痛みが軽減するメカニズムを纏める
痛いと感じた時に患部の周辺を摩ると痛みが軽減されるのは、太い神経(Aβの神経線維)を摩ることによって、Aβ神経線維の働きが優位になるからです。
つまり、摩ることによってAβ線維の働きが優位になっている=その時、C線維やAδ線維の働きは抑制されているということです。
摩ること、この変哲もない行為が痛みを抑制する。摩ることの奥の深さを感じさせられます。
川本療法の神髄を伝授:無料メルマガ登録
「摩る」ことは驚くべき効果がある @ 関連ページ
- 川本療法の歴史
- 川本療法の考え
- なぜ、母親の産道は狭いのか?
- 受精後、まず神経がつくられる
- 昔、赤ちゃんを「抱かずに育てる」という実験がありました。その結果は?
- 人に飼われている動物が長寿な理由
- 指圧法で皮膚を刺激すると身体はどのような反応をするのか
- 自分の弱い個所を知り、改善する努力をする
- 背骨のズレによる神経圧迫
- なぜ人によって罹りやすい病気が異なるのか
- 神経系の説明
- 神経圧迫と内臓機能低下
- なぜ片方の目だけが悪くなるのか
- 背骨のズレと自分の弱い箇所
- 川本式指圧法は神経を狙って指圧する
- 脳が関係する病気が増えてきた:故・重雄からの伝言
- 川本指圧法から川本療法へ
- 副腎と川本療法
- 「摩る」ことは驚くべき効果がある A
- ストレスからくる内臓疾患
- 自己指圧は難病も克服できる
- 背骨のズレを正す、自己指圧法
- 川本が考える食事法
- 分子整合医学には多くの疑問がある