川本指圧法から川本療法へ
生活の変化に伴い、病気の種類も変わる
川本治療所は1936年に開業し、内臓疾患を中心に治療してきました。前院長の故・重雄は、「神経を刺激する指圧法」を確立し、多くの治療実績をあげてきました。重雄没(1990年)後は、その遺志を孫の正己(現院長)が引き継ぎ現在も内臓疾患を中心に治療を続けています。
私は生前の重雄から多くの治療法を学びました。しかし現代に発症する病気は、故・重雄が治療してきた時代には少なかったガンが増え、膠原病やアレルギーなどの自己免疾患、またはヘルペスウイルスなどが関係する細菌・ウイルス性疾患疾患が増えてきています。
その背景には、現代に生きる人の多くがストレスを抱えていることが挙げられます。そのストレスの原因は、贅沢をしたいなどの「煩悩」が増えたことや、競争原理に負けるのではないかという「恐怖心」などがあります。
上記したようにストレスを解消するために働き、多くの収入を得ようとします。しかし、その働き方が大きく変化しています。
例えば、「人」が「動く」という字を合わせる「働く」となります。そのように一昔前の仕事はまさに、「人が動く=働く」でした。
しかし、現在はパソコンや電話などのOA機器を使った仕事が増えており、そのような職種では24時間中、顧客対応に追われます。
したがって、職種によって一日中座り、体を動かさずに脳を酷使する仕事をしている人が増えています。その結果、脳を多く使うことで脳は疲弊していまいます。
現代病を克服するために、栄養学の必要性が出てきた
上述したように、現代に生きる人は多くの煩悩を抱き、それをかなえるため体を酷使して働きます。仕事が忙しくなると、食べ物でストレスを解消しようとする傾向がでてきます。
ようするに、食事が過食傾向になったり、お酒などの量も増えたりします。
ここで問題なのは食事内容です。ストレスを解消するために食す物は、好きな物だけを多く食べるようになります。また、脳を多く使い疲弊することで、脳を短絡的に癒す栄養素である「糖質」の摂取が多くなります。
また、ストレス下では副腎という器官が多くのホルモンを造りストレスに対応します。しかし、度重なるストレスに対応すると副腎はやがて疲弊してきます。そうなると体の塩分調節がうまくいかなくなります。したがって、人はストレスに長期間晒されることで、多くの塩分を欲するようになります。
その他にもストレスの影響で、カフェインやニコチンなどの刺激物を欲するようになります。人は、そのような刺激物に対し「慣れ」がでてしまい、さらに強い刺激を求めます。
このように、ストレス下で生活する人の食事が原因で発症する病気が増えています。その代表は糖尿病やうつ病です。
故・重雄が治療していた時代は、栄養指導は取り入れていませんでした。なぜなら、その時代の仕事は体を動かすことで、食事から取ったカロリーはエネルギーとして使い切っていたからです。
しかし、現代は違います。したがって、食事内容によって体が病気になることを指導する必要性がでてきました。
そのことで私は、体と食べ物の関係について勉強し、自らも栄養療法を実践したりして栄養学を身につけてきました。
そして、栄養学を今までの指圧法に加味し、現代病に取り組んでいます。
ホルモンを多く使う時代になった
人の性格が「せっかち」になってきています。生活をみても、パソコンの接続の速度が遅いとイライラしたり、インターネットネットから注文した物でも翌日に届かないと「遅い」と感じたりします。
そのように、色々な場面でスピードを要求しているのが現代人の特徴です。この現象は人の体内でも起こっています。
体内では2つの命令系統により、生命が保たれています。その1つは神経系であり、もう1つはホルモンを使う方法です。
人の神経の総長は、100万kmもの長さであり、全身に張り巡らされています。その神経が伝える電気信号の速度は、最も速い場所では秒速120メートルといわています。
しかし「せっかち」な現代人は、神経系の伝達速度では満足することができず、ホルモンを使う伝達法を利用しようとします。
なぜならホルモンは、体の健康維持のためいろいろな機能を調節しており、個体の生命と活動性の維持、成長と成熟および生殖機能を担いますが、そのホルモンの伝達速度は神経系よりも早いからです。
そのホルモンの作用は、50メートルプールに「スプーン1杯分の黒い絵の具」を入れるだけで、瞬時にプール全体の水を黒色に変化させるほどの速度です。
ようするに、「せっかち」になった現代人は神経の伝達だけでは満足できなくなり、ホルモンを使う傾向が強いのです。
その結果、ホルモンを造る内分泌血器官(副腎・膵臓・卵巣・甲状腺など)の仕事が増え過ぎ、現代人の内分泌器官は疲弊しています。
そのために、一昔では少なかった症状である膵臓がんの急増、または副腎や甲状腺の疾患の急増、または卵巣膿腫や子宮筋腫などホルモンが関係する疾患が増えています。
このホルモンについても、故・重雄が治療していた時代には指導がなされていませんでした。その理由は、内分泌器官の病気が現代ほど多くなかったからです。
しかし現代は、「ホルモンのことを知らずして治療は成り立たない」ほど内分泌器官の疾患が増えています。そのことで私は食事療法と同様に、ホルモンの作用について勉強し、患者さんの治療に取り組んでいます。
サプリメントや生薬が必要な理由
現代人の脳は発達し、その脳を酷使して生活しています。そのために、脳にはより多くの栄養素が必要になります。また、上述したように現代人は速く適格な命令を要求することで神経系に加えホルモンを多く使います。
そのために、神経伝達やホルモンの作用が正常に働くために多くのビタミンやミネラルなどの栄養素が必要になります。
一般的には、現代の農法で作られる野菜にはビタミンやミネラルが少なく、また魚や肉も養殖されており、現代人が必要とする栄養素が足らないことでサプリメントが必要とされています。
また、ストレスにより糖質やカフェイン類などを過剰に食します。体内ではそれらを処理するのに、ビタミンやミネラルを使うことでも栄養素が不足し、サプリメントが必要です。
また、病院で診察を受けると症状を止めるために多くの薬が処方されます。その薬の作用は強力であり、どうしても薬に頼ってしまいます。しかし一生、薬を服用することで副作用もあります。そこで、薬を減らす手段にサプリメントや生薬が必要と考えています。
世の中には3000〜5000種のサプリメントがあるといわれています。それらの中には病気改善に必要な物質もあります。一方、効果が全くなかったり副作用が強くでたりする物もあります。
このサプリメントや生薬に関しても、故・重雄の時代には治療に取り入れてはいませんでした。しかし、現代では病気が多様化しそれらを克服するためにはサプリメントや生薬が不可欠です。
したがって、それらの効果や使われている材料、また製造法などを把握する必要があり、その知識を得るための勉強が必要です。
川本指圧法から川本療法へ
上述してきたように、現代に発症する病気の原因は多岐にわたります。そのために我々治療家は、広い視野をもち、多くの事を学んでいかねばなりません。
そのことを予期していたかのように、晩年重雄は「今後は脳が関係し、難しい病気が増えてくる。したがって、これからの時代は指圧法だけでは病気は治せない。時代にあった創意工夫をしていきなさい」と私に説きました。
その教えの影響があったかは分かりませんが、川本治療所は栄養学やホルモン学、またはサプリメント学を取り入れた治療へと変化しています。また、現代医療との提携も進めています。
伝統を引き継ぐために治療をしているわけではありません。患者さんの体や精神を改善方向に導くためには、伝統だけにとらわれてはいけないと私は思います。
しかし、「時代の変化に対応した治療を確立しようとも、治療家が患者の体に触れる行為(神経指圧法)は省いてはならない」という教えは厳守しています。
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