昔、赤ちゃんを「抱かずに育てる」という実験がありました。その結果は?
人はスキンシップがないと、自律神経が乱れる生き物である
母親が赤ちゃんを出産した際には、生まれた赤ちゃんを母親に抱っこをさせます。そのことにより、母親の匂いを覚え、抱かれることで皮膚に刺激が伝わり、科学では解明できない「親子の絆」が深まります。その行為は思っている以上に重要です。
例えば、早産などで生まれた未熟児は、母親に抱っこされることがありません。未熟児集中治療室に運ばれ、保育器の中で保育されます。
母親に抱かれないまま保育器で育った赤ちゃんは、情緒が安定しない場合が多いです。また、母親も母乳がでないなど精神的にも不安定になります。それを改善する方法として「カンガルー療法」があります。
その療法では、保育器から出ることのできた赤ちゃんを、母親が裸の状態で抱っこします。すると、精神的に不安定になっている赤ちゃんや母親の情緒を安定させることができます。
どうして、出産したとたんに母乳がでるのか
母体は出産時期が近付くとオッパイが張り、哺乳の準備ができてきます。しかし、不思議に出産時期が2週間ほど延びても、母乳だけが先に出ることはありません。
この理由は、母体に備わっている母乳分泌抑制因子(一種のホルモン)の働きによります。
その作用は、生まれた赤ちゃんの産声を聞いたとたんに解除され、母乳が出る準備が整います。
そして、母親が赤ちゃんを抱っこしたり、赤ちゃんが乳首を吸うことで、母体の脳下垂体からプロラクチンというホルモンが分泌され、乳房に「おっぱいを出しなさい」とい信号が伝わり、おっぱいが出るようになります。
プロラクチンの量などにより、全ての人がすぐに母乳が出るわけではないのですが、皮膚と脳が繋がっていることがよくわかります。また、出産直後のスキンシップがいかに大切かということもわかります。
日本は、出産後すぐに母親と新生児を離してしまう伝統があり、スキンシップの重要性に関し軽視してきました。それとは逆に、欧米などは出産直後のスキンシップの時間を長くとり、母体と赤ちゃんの絆を深める伝統があります。
最近は日本でも欧米諸国を見習い、出産直後のスキンシップ時間を重んじるようになってきました。
抱っこされないで育てられた赤ちゃんはどうなるのか
ここで、皮膚刺激の大切さを知ることのできる興味深い実話を紹介します。その話は、13世紀のローマ帝国の時代です。
当時、最高権力者フリードリヒ2世は、新生児を母親から引き離して育てた場合、新生児がどのように成長するかを調べる実験をしました。
その新生児は、囚人同士の間に生まれた子を集めてきたといわれています。フリードリヒ2世は、集めてきた新生児に対し、抱っこすることを禁止しました。ミルクを飲ます時は寝かしたまま飲まし、また赤ちゃんを起こす際は柱に釘を打ちつけ、赤ちゃんに首輪状のものを付け釘にひっかけて育てるように指示しました。
一般的に考えれば、抱っこをされなくともミルクさえ与えていれば、赤ちゃんは成長していきそうに思います。しかし、抱っこされずに育てられた赤ちゃんは、尿が出なくなることで尿毒症になったり、また声を上げたりすることもできなくなったそうです。
そして、抱っこされずに育てられた赤ちゃんは、生きていくことができずに死んでしまったそうです。
子供は不安になると「抱っこ」を望みます。また、痛い個所があると「擦って」といいます。これは本能的に皮膚に触れてもらうことで精神が安定することを知っているからです。
この本能は大人でも同じです。しかし、大人は不安を感じた時でも「見栄」や「プライド」が邪魔してしまい、その本能を表には出せずにいます。そのことで、スキンシップ不足に陥り病気を発症している人が多くいます。
皮膚は脳と密接に関わっている
人間の体は、外胚葉・中胚葉・内胚葉から分化してつくられていきます。脳と皮膚は、あまり関係性がないように思われがちですが、外胚葉から分化してつくられています。したがって、脳と皮膚は密接に関わっているのです。
人は、皮膚から多くの情報を得ています。人の皮膚を広げると、タタミ1畳分の広さになりますが、そのすべてが精妙な感覚器官です。怖い、熱い、または嬉しいなど、皮膚で感じた情報は直ちに脳に送られ、脳からは、それらの反応に対応するためのシグナルが発せられます。
例えば新生児は、母親が抱っこすると安心しますが、抱っこを不安がる父親が抱くと泣きだします。また、育児経験のある祖母には心を許しますが、新生児の扱いになれていない祖父にはなかなか心を開きません。
新生児の皮膚はまるで、こちらの心理状態を見透かしているかのような反応をします。この反応は、大人になるにつれ鈍くはなるように思われがちですが、本能に年齢は関係ありません。したがって、大人にもスキンシップは必要と私は考えています。
人の病気は皮膚刺激なしではだけでは改善しない
スキンシップが大切なことはお伝えしました。しかし、どんなスキンシップでも良いわけではありません。
例えば、女性はエステサロンに行きオイルマッサージという皮膚刺激をうけます。そのことにより情緒は安定します。しかし、オイルマッサージでは病気は回復しないために、数時間でイライラや健康不安が再発します。
それとは逆に、歯の痛い場合は歯医者に行きます。ほとんどの人は、歯の治療に対してストレスを感じます。しかし、その治療により痛みが消えることで情緒は安定します。
上記したように、気持ち良いスキンシップを受けて病気を改善できないと、人はすぐに不安になります。また、歯の治療のように嫌なスキンシップでも痛みが取れれば情緒は安定します。
そのことから考えると、指圧療法は患部を気持ちよくすることができ、また患部を改善に導ける可能性がある理想的な療法といえます。
栄養療法や運動療法などをしているのにも関わらず、病気の改善が思わしくない人は、「病気を治すことを念頭においた皮膚刺激法」をおこなっている治療家に問い合わせてはいかがでしょうか。
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