乳酸菌のサプリメントが効かない理由
腸内細菌ビジネスが横行している
世間では、「腸まで届く乳酸菌」「人には人の乳酸菌」など数多くの乳酸菌やビフィズス菌の必要性を謳った広告を目にします。その理由は、日本人は便秘をはじめとする腸に不安を抱えている人が多いからです。
一般的に腸の病気といえば便秘か下痢かですが、実際は腸内細菌のバランスが乱れることで、さまざまな症状が発症します。その症状をまとめます。
@便秘または軟便である
A慢性的な便秘と腹部膨満感があり、オナラがよく出る
B便秘ではないが腹部膨満感があり、オナラの臭いが臭い
C貧血・頭痛・めまい症状がある
D胃の圧迫感・逆流性胃炎・ゲップの症状がある
E乾燥皮膚、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患がある
F太りやすい人は太り、痩せ過ぎの人は痩せる
G自律神経が安定しない
H就寝時に歯ぎしりや噛みしめをする
I口臭・歯槽膿漏がある
上記した以外にも、現代人が抱える体内環境の不調は、腸内細菌のバランスが崩れることで発症していることが少なくありません。
「腸内細菌のバランスが崩れる」と腸内はどうなるのか
腸内には善玉菌と悪玉菌、または腸内の環境に応じて善玉にも悪玉にも変化する日和見(ひよりみ)菌が生息しています。
腸内細菌はストレスや抗生物質の服用または、糖質の過剰摂取や胆汁の質の低下などにより善玉菌が弱るといわれています。それらの影響で善玉菌の勢力が弱ると日和見菌は悪玉菌に変化し、腸内は悪玉菌の勢力が優位になります。
善玉菌、悪玉菌は双方とも分泌物質を生産しています。善玉菌が生産する分泌物質で作られた医薬品にペニシリンがあります。一方、悪玉菌も分泌物質を生産しており、その分泌物質が増え過ぎると上述したような多種の症状を引き起こします。
悪玉細菌が出す分泌物を減らさなければならない
腸に生息する悪玉菌が作る分泌物質が多種の症状を引き起こすことはお伝えしました。そこで、悪玉菌を減らすことで症状の改善緩和に導いてくれる可能性のある「乳酸菌(プロバイオティクス)」の開発に多くの会社が力を入れています。多くの人はその研究結果を信じ、乳酸菌のサプリメントを服用しています。
なぜなら、乳酸菌が腸にまで届くことでことで、悪玉菌の増殖を抑制するからです。
ここで乳酸菌の働きを簡単にまとめます。
@乳酸菌自身が人間にとって必要な栄養素や酵素を作る
A腸の粘膜の質が向上し異物の侵入を防御してくれる
B乳酸菌が作る分泌物質によって、悪玉菌やウィルスの増殖を阻止する
上記した、これらの働きの多くは乳酸菌が生産する分泌物質(バクテリオシン)によって担われています。
そこで多くの会社が乳酸菌の必要性を謳い、各会社で独自の菌種を培養しサプリメントの商品を開発しています。
また、昨今の乳酸菌サプリメントはカプセルの技術の進歩により、胃酸や胆汁の影響を受けないで乳酸菌類が腸にまで到達していることは確認されています。
乳酸菌が腸に届いても意味がない
現在開発されている乳酸菌のサプリメントは、腸内に到達していることはお伝えしました。しかし、多くの人が乳酸菌のサプリメントを服用しているにも関わらず、症状の緩和を体感できる人は少ないです。
その理由をまとめます。
@腸内には個人固有の腸内細菌叢(集団)が既に存在する
A「@」のことで、外部から摂取した乳酸菌類は、依存の集団の中で生存することは難しい
Bストレスや薬の服用、糖質の過剰摂取により悪玉菌が作る分泌物質が増え、乳酸菌の定着を妨げる
各メーカーは挙って「腸に到達するプロセス」を切り口に乳酸菌の効果をアピールしています。しかし、上記したように、乳酸菌が腸に到達しても、それらが腸内で宿らなければ何の意味もありません。
つまり、メーカーの説明は、腸に到達した乳酸菌が腸内で宿った所までの確認であり、その後乳酸菌が腸内に定着し、分泌物を生産したことは確認していません。
ようするに、乳酸菌がその機能を発揮するためには乳酸菌が宿り、分泌物(バクテリオシン)を生産してくれる状態でないと意味がないということです。
ここで乳酸菌が生産する分泌物質の働きをまとめます
@乳酸菌が優位となる腸内細菌叢(集団)の形成
A悪玉菌が生産する分泌物質の増殖を抑制する
上記した以外にとても大切な働きが乳酸菌にはあります。それは免疫を安定させることです。その理由の1つに、乳酸菌の生産する分泌物質から抗生物質の「ペニシリン」が開発されたことから、乳酸菌の分泌物質には天然の抗生物質の働きがあるからです。
乳酸菌が生産する分泌物質は増やせるのか
現在はストレス社会です。中長期的なストレスで体は自律神経が乱れたりさまざまな影響がでます。その1つに腸内細菌叢が乱れることがあります。
例えば、子供が学校やクラブに行きたくない場合に、腹痛を訴えることがあります。また、大人でもストレスで便秘になったり、過敏性の大腸炎になったりします。そのように、腸内細菌叢はストレスの影響を受けやすいといえます。
また、多くの人は何らかの薬を服用しています。その薬も腸内細菌叢を乱す原因になります。そのことで現代人の腸内は、善玉菌(乳酸菌)が減り、悪玉菌群が優位な傾向であるといえます。
「乳酸菌を腸内で増やせるのか?」 この問いに1つの光が見えてきました。
それは、「便移植」です。健康な人の「便」から有能な腸内細菌を抽出・培養し、病気の人にそれを移植する方法です。その方法で原因不明で、治療の手立てがなかった人が回復するケースが報告され始めました。
そのように、腸内で有能な細菌叢が増えれば、病気は改善に向かう可能性があるということです。
また、最近は「新たな乳酸菌サプリメント」が開発されています。それは乳酸菌が生産する分泌物質を培養抽出したサプリメントです。つまり、乳酸菌が作る分泌物質を研究機関で培養・抽出したものを服用するというものです。
上述してきたように、乳酸菌を摂取しても腸内で宿り増殖する可能性は少ないので、乳酸菌の分泌物質を直接摂取しようというものです。開発側のデーター通りに効率的に腸に届き、腸内で乳酸菌が作る分泌物質が増え、その恩恵がえることを期待したいです。
「病気になる人、ならない人の差はどこにあるのか?」 私はこのことを常に考えて施術にあたっています。その差は遺伝によるものが大きいですがその他にもストレスや食習慣の乱れ、または薬の服用などで腸内環境が乱れている点も病気になる原因の1つと思っています。
病院に行っても原因がないのに体調不良が続いてる人は、一度腸内環境の改善を試みてはいかがでしょうか。