呼吸が深くなる自己指圧法

 現代人はストレスのために呼吸が浅い
川本治療所は私の祖父にあたる故川本重雄が昭和11年に開院しました。そして晩年、故重雄は「最近、呼吸不全の患者さんが増えてきたな、昔には少なかった症状だ。これは現代社会の影響やな」と私に語っていました。

 

故重雄が言っていた現代社会の影響とは、ストレスが多い社会ということです。人はストレスを受けると、さまざまな症状を発症します。その1つに、現代人の呼吸の浅さがあります。

 

人の呼吸は精神がリラックスすると深くなり、逆に精神が緊張すると浅くなります。

 

例えば結婚式でスピーチをする場合、精神が緊張状態のために呼吸は浅くなります。人はそのような時、大きく深呼吸をし足らない酸素を補おうとします。しかしスピーチが終了すると、緊張から解放され「フー」と深い呼吸ができるようになります。

 

 呼吸は血液中のPHを調節している
私たちの体は、約60兆個もの細胞から構成されています。人は物を食べなくても1週間ほど生きることができますが、呼吸は3分ほど止まると人は死んでしまいます。

 

人にとって酸素(O2)が不可欠と言われる理由は、人は酸素を使って(酸化作用)、生命活動に必要なエネルギーを得ているからです。

 

ここで、酸素を使った(酸化作用)の流れを簡単にまとめます。

 

 @呼吸によって肺胞に取り込まれた酸素は、肺の毛細血管に入る

 

 A肺の毛細血管から全身の血管(血液)へと運ばれる

 

 B「A」の作用で血液中に取り込まれた酸素はへモグロビンと結合する

 

 C酸素とヘモグロビンが結合し酸化ヘモグロビンとなり全身の各細胞に運ばれる

 

 D細胞は、酸化ヘモグロビンから酸素だけを取り込み、エネルギーの産生に使う

 

上記したように、酸素がヘモグロビンと結合することで人はエネルギーを作ることができます。

 

人はエネルギーを生産すると排気ガスが出る
車を走らせるにはガソリンが必要です。また、車を走らせると必ず排気ガスが出ます。それと同様に人も酸素を利用してエネルギーを得た場合に、体内で排気ガスが出ます。

 

体内で発生する排気ガスは、「揮発性酸(炭酸)」と「不揮発性酸(炭酸以外の酸)」に大別されます。

 

上記した「揮発性酸(炭酸)」と「不揮発性酸(炭酸以外の酸)」のうち、呼吸を使ってエネルギーを生産する際には「揮発性酸(炭酸)」が産生されます。

 

呼吸を使うことで発生する排気ガスは揮発性酸(炭酸)であることはお伝えしました。その大部分は、炭水化物や脂肪を燃焼させることで発生する二酸化炭素(CO2)です。

 

その二酸化炭素は肺から呼気によって排泄(ガス交換)されます。つまり、呼吸がしっかりできていないと酸(排気ガス)を体外に捨てることができなくなり、その結果、血液中のPHの調節に支障がでます。

 

つまり、呼吸が浅くなり血液中の酸素濃度が低下すると、エネルギーを効率よく生産できないことと、エネルギーを生産した際に発生する排気ガス(炭酸)を体外に排出できなくなることで、健康が損なわれます。

 

 「呼吸を忘れている時がある」:患者さんのコメント
私は慢性疲労症候群やうつ症状の患者さんを多く施術しますが、そのような症状を発症する人の共通点は「集中力が高く、思考能力に長けている人が多い」ことです。

 

そのような患者さんに「呼吸が浅いですね」と私が問いかけると、「ハイ、時々呼吸するのを忘れて仕事している時があります」という答えが多く返ってきます。ようするに、集中力が高い時は精神は緊張状態にあることで、呼吸が浅くなっています。

 

呼吸が浅いということは体内は酸素不足の状態になります。体内に酸素が不足すると思考力が低下したり、臓器の働きも低下したりします。つまり、呼吸が浅くなることは、さまざまな症状が発症する原因であるといえます。

 

 幼児の寝息は深く、一定のリズムである
幼児が寝ている時の呼吸は深く、一定のリズムを打ちます。その理由は、幼児はまだ人間関係や受験などのストレスがないために精神はリラックスな状態です。したがって、呼吸は深くなります。

 

呼吸が深い幼児に、不眠症や頭痛、または胃痛などの症状は発症しません。なぜなら、深い呼吸により体内は酸素に満たされていることで、脳や臓器の働きは活性するからです。

 

しかし、小学校の高学年や中高生になると、クラブや勉強での成績が気になりだし、精神が乱れてくることで呼吸が浅くなる傾向がでてきます。その影響で、その年頃になると、歯ぎしりや寝言を言うようになったり、頭痛や胃痛を訴えたりします。

 

そのようになる背景に、精神が緊張することで呼吸が浅くなっていることがあります。

 

 深呼吸で酸素を獲得してもその場限りである
現代に生きる人は自らの呼吸が浅いことを自覚しています。そのことで、深呼吸を習慣づけたりヨガに通って呼吸法を会得しようとする人が増えています。

 

例えばヨガでも達人の域に達すると、緊張状態でも深い呼吸をすることができます。しかし、いわゆるヨガを「習っている」人は、ヨガ教室に通っている時だけ深い呼吸を意識しますが、経験や練習不足から、その呼吸法を日常で活かせられている人は少ないです。

 

また、深呼吸も同じで、1日に数回深呼吸を意識するだけではたいして意味がありません。

 

人は起きている時間帯は交感神経が優位なために、呼吸は浅い状態です。そのことに問題はないのですが、現代人は強い緊張状態にあることで想像以上に呼吸が浅くなっています。その状態を少しでも弛める方法は短時間の「昼寝」です。

 

昼食後の空いた時間に、友人とおしゃべりをしていないで積極的に昼寝をすることをお勧めします。

 

 自己指圧は呼吸を深くし、自律神経も整える
深い呼吸が自然にできない理由の1つに、自律神経が緊張していることがあることはお伝えしました。その方法の1つに「昼寝の勧め」を紹介しました。ここでは、自己指圧により自律神経の緊張を緩和させる方法を紹介します。

 

 ・「丸太」を使う方法:

 

矢印で示した腋下(えっか)から背中にかけて、呼吸が深くなるポイントが点在しています。

 

写真は参考のために立った状態ですが、実際は寝て腋下(えっか)付近に丸太を当てていきます。

 

バスタオルを2枚重ね枕とし、丸太をやや斜めにセットします。

 

写真のようにやや、丸まり脇の下に丸太を当てていきます。ポイントは各自で微調節をします。

 

後方からみた写真。このような位置に丸太がきます。

 

徐々に背中のほうに倒れながら、「痛気持ちいい」場所をみつけていきます。痛気持ちいい場所が見つかれば10〜20秒その位置で静止します。

 

このように、脇から背中、背中から脇へと体重移動しながらポイントを探します。そして、丸太の位置も脇から徐々に下にずらして同じ動作を繰り返しします。

 

 ・「フタコブ楽だ」を使う方法:

 

矢印の辺りからやや上、やや外に呼吸を深くするポイントがあります。

 

ソファや椅子の背もたれに「フタコブ楽だ」を縦にセットします。

 

このように、背中の力を抜いた状態で器具に押し当てます。

 

同じ箇所を1分ほどしたら、体の位置を微妙に変えながら「痛気持ちいい」場所を探っていきます。なお、このポイントは上向きで寝ても同じ刺激を加えることができます

 

上記したことは呼吸を深くする1つの例です。その他にも仙腸関節上部頸椎の刺激も併せて行うとより効果的です。

 

 自己指圧は深い眠りを誘う
現代人は緊張から呼吸が浅くなっています。特に寝ている間も緊張状態であることで、いびき・歯ぎしり・無呼吸症候群などを引き起こします。

 

それらを回避する1つの方法に、就寝前に自己指圧をおこなうことをお勧めしています。自己指圧を就寝前におこなうと、患者さんが「知らぬ間に寝ていける」という報告を多く受けます。そのような自然な状態で眠りに入れれば、深い睡眠が確保できます。

 

川本治療所では自己指圧法を目的別に患者さんに伝え実践してもらえるように、治療後に指導したり、写真を添付したりします。「なぜそこまでするのか?」と思う人が多いですが、私は自己指圧の継続が健康維持に必須であると思っているからです。

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